地熱発電の巻(八王子番外編)
2009年08月31日
三菱総合研究所
江嵜さん(左、環境・エネルギー研究本部 地球温暖化戦略研究グループ)
清水さん(右、同上)
09年7月28日
■タービンを回すには
――脱石油エネルギーが言われる中、
地熱発電についてはあまり触れられません。どうしてですか?
江嵜さん「たしかに地熱には、他にないメリットがあります。
太陽光は雨や曇りでは不安定だし、風力は風しだいです。
それに対して地熱は安定していますから。
でも発電用のタービンを回すには、
地上で200℃程度の熱がほしいのですが、
その温度の水蒸気が出るのは、日本では岩手の松川地熱発電所のみです。
他では、少し温度の下がる、水蒸気と熱水の混合流体で出ます。
熱水の熱も沸点の低い媒体に蓄えれば気体の状態になります。
アンモニアやペンタンなどであれば気体の状態になるので、
熱水とアンモニアなどで熱を交換して行う発電があり、
これをバイナリー発電といいますが、日本ではまだ普及していません。
九州の八丁原発発電所がこのタイプですが、まだまだです。
200℃程度の水蒸気が出るのは、ほぼ火山のあるところに限られ、
国立公園内が多いですね。
八王子では200℃の温度は出ません。
仮に出たとしても、かなりの流量、何トンという湯を、
大きな直径のパイプでくみ上げる必要があります。
コスト的に合わないと判断したんでしょう、
だいぶ前からデベロッパーが消極的になりました。
NEDOが先に消極的になったのかもしれませんが。
地熱の発電施設を作ったのは八丈島で最後。もう適したエリアがないんです」
■東京の「温泉」とは
「過去の報道で、東京に「温泉」が出たというのがありましたが、
法で指定された鉱物が入っていれば10℃でも「温泉」なんです。
東京で出た「温泉」のほとんどは20℃を切っているでしょう。
そういった報道が誤解を生んでいると思います。
八王子でも60℃が出たところはあるようですが、
60℃のお湯が出ても発電には役に立たないでしょうし、
それも例外的なケースです。
東京のように火山帯のような熱源がないところでは、
100mで3℃上昇する地温勾配で温度が上昇する分しか期待できませんから、
地下で200℃を達成するにも、6000m級の深さが必要になります。
掘っていって偶然、熱水に当たるということもあるかもしれませんが、
ボーリングに1000万円~1億円かけるにはリスクが高すぎると思います。
ですからアンモニアを使ってであっても、そんなに深い地下から引っ張って、
タービンを回転させるということは考えにくいですね。
八王子で地熱発電ができないか、ということですが、
エネルギーの地産地消に意味があると思いますし、
そういう意味では森林資源の豊富なバイオマス発電の方が
八王子に向いているような気がします」
――直接掘らずに、熱源の探索手法を開発する、という方向はどうですか?
「火山などがあるところでは、地質屋さんが地層の様子から、
ありそうなところを探し、物理探査で、地上から電流や地震波をおくってみます。
すると、火山岩の構造がどうとか、熱水を出そうとかいったことが
ある程度分かりますので、今度は圧力をかけて割れ目を作ってみる。
するとそれなりに分かります。途中でボーリングを曲げる技術もありますから、
ある程度の修正もききます。でも数十度の温泉を期待する程度のところでは、
地質図などから適地を探していくことになり、物理探査はやりません」
――地熱発電に国の補助金が出るという報道もありましたが。
「難しいとばかり言っていても、低炭素社会へ世界が動いているし、
火山国の日本での地熱発電の可能性はポテンシャル的には
あるじゃないかという声もありあます。事実、発電量で海外に抜かれました。
温水という熱のキャリアがなくても、熱い岩盤だけのところに外から水を入れて、
熱を回収する方法は、日本ではあまりいい結果を得られなかったようですが、
アメリカでは成果が出たらしい。
過去、国立公園だからだめだとか、温泉業者に反対されてとかいった、
新聞ネタ的な理由で止めてしまったようなところがあって、
未達成感というようなものがある。
しかもNEDOも国も、温泉と地熱発電は関係ない、
の一点張りでスノッブな対応をしてしまった。
最近は「温泉に影響があるかもしれない」というスタンスに変えて、
モニタリングをはじめました。
「もし、影響があったらセーブします」という融通のきくスタンスにです。
しかしそれも、地下に火山などの熱源がある場所での話で、
国立公園以外(周辺)にも可能性を探るようです」
<このブログは八王子未来学コーディネーターがおおくりしています>
Posted by コーディネーターズ at 13:04│Comments(0)
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