たまりば

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東京高専/伝わる熱の巻

東京高専/伝わる熱の巻

東京工業高等専門学校

清水さん(機械工学科 准教授)

4月14日(火)

■全熱交換は湿気も含む

――全熱交換は先生のご研究とは関係あるのですか?

UCANの社長がおっしゃっている全熱交換は

「湿った空気による熱だけでなく湿気も含む熱交換」ですね。

出入りする二つの空気の間に和紙やアルミなどを置いて、

それで一方の空気の熱と湿気を同時に反対向きの空気に伝える。

つまり、空気が持つ熱(顕熱)と

空気中に含まれる水蒸気が液体の水になる時に放出する熱(潜熱)の

両方を反対向きの空気に湿気とともに伝えてくれます。

人に優しいとても素晴らしい方式ですね。

このとき和紙などを通して水と熱の両方の移動がありますね。

■「伝導」ではない「拡散」は呼吸に応用

私の研究室で行っているのも熱や物質の移動で、

熱の輸送や物質の「拡散」を伴います。

たとえばある濃度の二酸化炭素が、

パイプの中でどう拡散していくか、

その拡散の速さなどを測定しています。

「振動流中の拡散」がテーマですね。

振動流に興味を持ったのは、

キリンは首があんなに長いのになぜ呼吸できるのか、ということでした。

呼気・吸気の、一回あたりのわずかな換気量に対して、

長い首の内面には肺胞がないので、

ガス交換に寄与していない容積が結構大きいのに。

それを不思議だなと思ったあたりから始まりました。

この行ったり来たりする流れを振動流といい、

人工呼吸器にも応用されています。

振動流が乱流状態を作って拡散が増進されると考えています。

熱の伝導と物質の拡散は異なる現象ですが、

同じ偏微分方程式であらわされるので、

振動する空気中の炭酸ガスの拡散係数を求めるのと

同様に振動する水の中の熱拡散係数も測定したりしています。

■熱を伝導しやすい、意外な物質

UCANさんのやられている、

交換する空気間の熱交換率については、

主に熱伝導によるので、間に置く素材は、

和紙<アルミ<銅<銀<ダイヤモンドの順に適していると思います。

ダイヤモンドは意外にも熱伝導率がかなり高い。

ただし、凝縮した水分を吸収して

反対向きの空気の流路へ輸送してくれる強い毛細管力等を持つ素材と

広い表面積を実現する表面形状の工夫が必要でしょう。

■物質ではなく素子

一方、熱をよく伝える素子の代表は「ヒートパイプ」で、

パイプの中の物質の潜熱や表面張力が重要です。

ヒートパイプは30mとか100mとか、

離れた距離の間で熱を伝えるのにとても効果的です。

小さな温度差で遠くまで伝えることができる、

いわば熱の超伝導体です。

むかし北陸の日本海の熱を何十キロも先の豪雪地帯に

巨大なヒートパイプで運ぼうと半分冗談で提案した人がいましたが、

もちろんまだ実現はしていません。

全熱交換率は測定できると思いますよ。

温度、湿度、空気流量(何cc/秒)などが測定できれば。

もちろん、蒸気表を使用する必要があるでしょう。

■以前はロボットの研究者

――清水先生はロボコンという映画に関わったと聞いたことがありますが

以前、ロボコン(2003年)という東宝の映画で

高専のロボットコンテストが取り上げられました。

高専生役で長澤まさみや小栗旬が出ていた映画です。

高専ロボコンを十何年か指導してきた立場ということで

依頼を受け、この映画の役者さんたちの

技術指導担当として協力させていただき、

私もエンディングロールに名前を載せていただきました。

そのころ卒業研究の学生に作らせたスキーロボットは、

ボーゲンではなくパラレルで滑り、重心を移動させるだけで、

つまり自由度1で左右に曲がれるロボットでした。

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